こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。
「遺言書を作成したから安心だ」と思っていませんか?
実は、せっかく作成した遺言書も、その内容を滞りなく、そして円滑に実現するためには「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」という存在が欠かせません。
行政書士として、多くのお客様の相続手続きに携わる中で、遺言執行者の有無が相続トラブルの回避と手続きの迅速化にどれほど大きな影響を与えるかを実感しています。
今回は、遺言執行者とは具体的にどのような役割を担い、なぜその選任が重要なのかを解説します。
遺言執行者とは? その法的な役割
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要なすべての行為を行う権限を持つ者(民法1007条)を指します。
遺言は、財産の承継に関する遺言者の最終意思ですが、それが効力を持つには、名義変更や財産の引き渡しなどの「実行行為」が必要です。遺言執行者は、まさにこの実行部隊の中心となる存在です。
執行者の権限と義務
遺言執行者は、相続財産の管理や、遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を持ちます。これは、遺言執行者が選任されると、その行為は相続人全員の行為と同じ法的効力を持つことを意味します。
また、執行者は、就任後すぐに遺言内容を相続人全員に通知し、財産目録を作成して相続人に交付するなど、誠実な業務遂行義務を負います。
なぜ遺言執行者の選任が必要なのか?
「相続人の中で誰かがやればいいのでは?」と考える方もいますが、遺言執行者を選任することには、手続き上、そして紛争予防の観点から大きなメリットがあります。
メリット①:名義変更手続きを単独で行える
遺言執行者の最大のメリットは、不動産登記や金融機関の解約・名義変更手続きを、執行者単独で行える点です。
例えば、遺言書に「長男に不動産を相続させる」とあっても、執行者がいなければ、登記手続きには原則として他の法定相続人全員の協力(署名・押印)が必要になる場合があります。
しかし、遺言執行者がいれば、執行者単独で手続きが完了するため、他の相続人の署名や実印、印鑑証明書の取得が不要になり、手続きが格段にスムーズになります。特に相続人が多く遠方に散らばっている場合や、感情的な対立がある場合に絶大な効果を発揮します。
メリット②:相続人同士の無用なトラブルを防ぐ
遺言書があっても、その解釈や手続きの進め方を巡って相続人間に不信感や意見の対立が生じることがあります。
専門家である第三者を遺言執行者に選任することで、中立的な立場で遺言内容を解釈し、法的手続きを進めます。これにより、特定の相続人に手続きを任せることへの不公平感や、手続きの過程で生じる無用な疑心暗鬼を解消し、後の紛争を未然に防ぐことができます。
メリット③:手続きを確実に、迅速に進められる
相続手続きは、戸籍収集、財産調査、各種届出など、非常に専門的かつ煩雑です。遺言執行者として行政書士や弁護士などの専門家を選任すれば、正確な法律知識と豊富な実務経験に基づき、期限を意識しながら確実かつ迅速に手続きを完了させることができます。
遺言執行者になれる人・なれない人
遺言執行者は、遺言書の中で指定することが可能です。
誰でもなれる?
原則として、未成年者と破産者を除く誰でも遺言執行者になることができます(民法1009条)。相続人、受遺者(財産を受け取る人)、法人(弁護士法人、司法書士法人など)も選任可能です。
専門家を強く推奨する理由
先に述べたメリットを最大限に享受し、執行手続きの確実性を担保するため、遺言書を作成する際は行政書士や弁護士、司法書士などの専門家を執行者に指定することを強くお勧めします。
行政書士は、戸籍収集、財産目録の作成、金融機関との折衝、預金解約手続きなど、遺言執行の実務(非争訟)において広範な知識と経験を持っています。
遺言書への記載例
遺言執行者の選任は、遺言書に明記されていることが大原則です。
遺言書には、氏名、生年月日、住所などを特定し、「本遺言書の遺言執行者として、〇〇(氏名)を指定する。」といった形で明確に記載します。
まとめ
行政書士は、遺言書の原案作成から、公正証書遺言の証人としての立ち会い、そして遺言執行者としての就任までを一貫してサポートできます。
- 遺言書作成のサポート
執行者の指定を含め、法的に有効な遺言書作成をサポートします。 - 遺言執行業務
執行者に就任し、煩雑な金融機関の手続きや名義変更を代行し、遺言者の想いを確実に実現します。
遺言は、ご自身の生きた証を次世代に託す重要な手段です。その想いを「絵に描いた餅」で終わらせないためにも、ぜひ遺言執行者の選任をご検討ください。
ご自身の状況に合わせて、どのような執行者を指定すべきかお悩みの方は、ぜひ一度、行政書士にご相談ください。
初回相談は無料です。お気軽にご連絡ください。
詳しくは行政書士わたなべ事務所まで


