こんにちは 行政書士の渡辺晋太郎です。
今回は遺言書についてです。
自分の死後、残されたひとに迷惑をかけたくないと誰しも思うもの。
遺言書はまさにその役割を果たすのですが、後述の通り、遺言書を書く方はごくわずかです。
そこで、遺言書を書くべき理由と重要性をお話いたします。
遺言書の作成件数について
さて、どれくらいの方が遺言書を書いているでしょうか?いずれも2023年のデータで、
・公正証書遺言書作成数 118,981件
(日本公証人連合会 「令和5年遺言公正証書作成件数について」より)
・自筆証書遺言保管数 19,336件
(法務省民事局 「遺言書保管制度の利用状況」より
合計すると141,295件です。厚生労働省によると2023年に亡くなった方は1,575,936人ですので、遺言書を書いた方÷亡くなった方=8.9%と1割にも達していません。
2023年に遺言書を作成したすべての方が2023年に亡くなっているわけではないですし、法務省に保管していない遺言書もありますので、もう少し増えるとは思いますが、それでも書く方はわずかです。
遺言書を書かない理由は?
ほとんどの日本人が作成していない遺言書ですが、その理由としてよく挙げられるのは、下記の通りです。
・そこまで多くの財産を持っていない
・家族が仲がいいから、もめるはずがない
・法律に定められたルールに従えばいい
・縁起が悪い
これを見て、「そうそう!」とうなずかれる方も多いのかなと思います。
しかし、常に正しいとは限らないのが実情です。
一つ一つ見てみましょう。
遺言書を書かない理由に根拠はある?
・そこまで多くの財産を持っていない
→遺産が少ないから、争いが起きないかというとそんなことはありません。
調停や審判など裁判所へ持ち込まれた相続争いの中で、遺産額1,000万円以下は全体の33%、遺産額1,000~5,000万円でも全体の43%あり、決してお金持ちだけの問題ではないことがわかります。(「令和3年司法統計」より)
・家族が仲がいいから、もめるはずがない
→いくら仲が良くても金銭が絡むと別になります。もらえるものなら少しでも多くもらいたい感情が出てくるものです。
長男は生前親から金銭的なサポートをもらっていて、それをこれまで面白くないと思っていた次男が遺産は多くよこせと言ってきたり、長男が親の介護費用を負担してきたので、多めに遺産をもらうと言ってきたり、その家族特有の事情が絡み合う可能性があります。
また、第三者である相続人の配偶者が「もっともらえないの?」などと言ったりもしてきますので、揉める火種はいくつもあります。
・法律に定められたルールに従えばいい
→遺産がすべて分割可能な金銭などであればルールである法定相続分通りでもいいのですが、不動産など分割ができないものがあると厄介です。(金銭だけでも上記の通り揉める可能性はありますが。)
配偶者はすでに亡くなっていて、子どもが2人いる親が、評価額3,000万円の自宅と1,000万円の金融財産を持っているとします。これをルール通りに分けると子どもの法定相続分が1/2ずつですので、簡単には分割することができないこともあることがわかると思います。
・まだ元気だから大丈夫、縁起が悪い
→人間いつ体調が悪くなるかもわかりませんし、事故に遭うかもしれません。また、認知症になると遺言書を作成しても無効になってしまう可能性もあります。具合が悪くなったら書けばいいと言っても、その時はそれどころではないことだってあります。
子どもから親に遺言の話をすると、「生きているうちから死後のことを考えるなんて!」とか、はたまた「早く死んでほしいのか?」と言われてしまいそうです。
死後の備えとして生命保険があります。これはまさに自分が亡くなった後のことを想定して加入するもので、残された家族に迷惑をかけたくないと思ってのことと思います。遺言書は、亡くなった後のトラブルの火種を摘むことと、面倒な相続手続きを省略できますので(このことは後日ブログに書こうと思います)、残された家族に迷惑をかけない生命保険と同じ役割を果たせるといえます。
まとめ:遺言書を書くべき理由
遺言書を書かないリスクをおわかりいただけたかなと思います。
・そこまで多くの財産を持っていない
→遺産が少なくても揉めるときは揉めるので、トラブル防止のために遺言書は書くべき
・家族が仲がいいから、もめるはずがない
→親が生きている間は揉める要因が顕在化しにくいので、揉めないために遺言書は書くべき
・法律に定められたルールに従えばいい
→ルールに従っても揉めるときは揉めるので、それを防ぐために遺言書は書くべき
・縁起が悪い
→残された家族に迷惑をかけたくないのであれば、遺言書は書くべき
書かない理由の一つとして、「書くのが面倒。。」とか「どう書いたらいいかわからない。。」というのもあると思います。自筆証書遺言であれば、そこまで手間になりませんし、ご相談いただければ遺言書作成方法や注意点などをアドバイスいたします。初回相談は無料です。お気軽にご連絡ください。
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