こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。
よくあるケースとして
「義理の両親を10年間、自宅で介護してきました。でも、夫が先に亡くなっているので、私には相続権がないと言われました。あんなに尽くしたのに、一円ももらえないのでしょうか?」
というものがあります。
以前ご紹介した「寄与分」と似ていますが、こうした「報われない介護」に光を当てる制度が「特別寄与分」です。
今回は、この制度の仕組みと、実際に請求するための高いハードル、そしてトラブルを防ぐための対策について解説します。
「特別寄与分」とは? の寄与分との違い
まず整理しておきたいのが、「寄与分」との違いです。
- 寄与分
「相続人」だけが主張できる。 - 特別寄与分
相続人以外の「親族」が主張できる。
ここでいう親族とは、一般的に「6親等内の血族」や「3親等内の姻族」を指します。代表的な例が、「亡くなった人の子供の配偶者(長男の嫁など)」です。
これまでは、どれだけ義父の介護に人生を捧げても、法律上の相続人(実子など)でなければ遺産を1円も受け取ることができませんでした。この不公平を解消するために、「特別寄与料」として金銭を請求できる権利が認められたのです。
特別寄与分が認められるための「3つの条件」
「介護をしたからお金をもらえる」といっても、お小遣い程度の手伝いでは認められません。法的に認められるには、以下の条件をクリアする必要があります。
① 無償での貢献であること
対価(給料など)をもらわずに尽くしていたことが条件です。
② 「特別の寄与」であること
親族として通常期待される程度の助け合い(たまの看病など)を超えた、顕著な貢献が必要です。「つきっきりで療養看護を行い、介護費用の支出を抑えた(財産の維持に貢献した)」といったレベルが求められます。
③ 請求先は「相続人」であること
この制度の最大の特徴であり、難点でもあるのが、「親族が、相続人に対して直接『お金をください』と請求する」という形をとる点です。
【重要】実務で見える「特別寄与分」の厳しい現実
制度ができたとはいえ、実際に行使するのは容易ではありません。行政書士として直面する「3つの壁」をご紹介します。
壁①:証拠の確保が極めて難しい
「どれだけ大変だったか」を口頭で訴えても、相続人は納得しません。
- 毎日の介護日誌
- 病院への送迎記録、領収書
- ケアマネジャーとのやり取りの記録 これらが揃っていないと、客観的な評価が下せません。
壁②:親族間の「感情の対立」が激化する
特別寄与料を請求するということは、義理の兄弟姉妹(相続人)に対して「私の取り分をよこせ」と言うに等しい行為です。 「嫁の分際で」「自分だってたまには手伝った」という反論が飛び出し、親族関係が修復不可能になるケースが非常に多いのです。
壁③:期間の制限
特別寄与料の請求には期限があります。「相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月以内」、または「相続開始から1年以内」に請求しなければなりません。葬儀や法要でバタバタしている間に、あっという間に期限が過ぎてしまいます。
争いを防ぐための「最強の解決策」
特別寄与分の制度があるから安心、というわけではありません。事後に「請求」するのは、エネルギーを使い果たす大変な作業です。 行政書士として、最もおすすめするのは「生前の対策」です。
案①:被相続人に「遺言書」を書いてもらう
これが一番です。義理の両親が元気なうちに、「長男の嫁の〇〇さんには、介護でお世話になったから〇〇円を遺贈する」という内容の遺言書を書いてもらえれば、死後に他の親族と争う必要はなくなります。
案②:養子縁組をする
義理の両親と養子縁組をすれば、法律上の「子」となり、正式な相続権が得られます。ただし、これは他の兄弟の相続分を減らすことになるため、慎重な話し合いが必要です。
案③:生命保険の活用
義理の両親を被保険者、嫁を受取人とする生命保険に加入しておく方法です(※保険会社の規定によります)。これは遺産分割協議の対象外となるため、スムーズに現金を渡すことができます。
案④:生前贈与
生きているうちに、感謝の印として財産を渡してしまう方法です。一人当たり年間110万円までであれば贈与税は非課税です。
必ず「贈与契約書」を作成してください。後から他の親族に「勝手に預金を引き出した」と疑われるのを防ぐため、「感謝の対価としての贈与である」という証拠を残すことが肝心です。
まとめ
「特別寄与分」という制度ができたことは大きな進歩です。しかし、この権利を使うためには、詳細な記録と、相続人とのタフな交渉が必要になります。
私が行政書士として目指すのは、「事後の請求で争うこと」ではなく、「事前の準備で感謝を形にすること」です。
もし、あなたが今、義理のご両親の介護で心身ともに疲弊しているなら。あるいは、そんな献身的な家族に報いたいと考えているなら。 手遅れになる前に、一度プロに相談してください。
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