こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。
相続の手続きをお手伝いしていると、避けて通れないのが「相続人間での感情の対立」です。
特に多いのが、
「私はこれだけ親の介護を頑張ったのに、何もしてこなかった兄弟と同じ取り分なんて納得できない!」
という主張です。
この「頑張り」を法律的に評価するのが「寄与分(きよぶん)」という制度。しかし、実務上、この寄与分を認めさせるのは至難の業であることをご存知でしょうか。
今回は、寄与分の壁と、それを乗り越えて円満な相続を実現するための「遺言書」の活用術について解説します。
そもそも「寄与分」とは何か?
寄与分とは、被相続人(亡くなった方)の財産の維持や増加に、特別の貢献をした相続人がいる場合に、その貢献度に応じて相続分をプラスする制度です。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 家業従事型
親の商売を無報酬(または低賃金)で長年手伝ってきた。 - 金銭出資型
親の借金を肩代わりした、自宅のリフォーム費用を出した。 - 療養看護型
老人ホームに入れず、自宅でつきっきりで介護をして介護費用の支出を抑えた。
一見、公平で素晴らしい制度に見えますが、ここには大きな落とし穴があります。
「寄与分」を認めてもらうのは、実はものすごく大変
実務において、寄与分が認められるハードルは非常に高いのが現実です。理由は大きく分けて3つあります。
① 「特別の寄与」でなければならない
単に「たまに実家に顔を出して掃除をした」「週末に病院の送迎をした」程度では、親族間の扶養義務の範囲内とみなされ、寄与分は認められません。「自分の仕事を辞めてまで介護に専念した」といったレベルの犠牲が求められることが多いのです。
② 証拠が必要
「どれだけの期間、どのような貢献をしたか」を客観的に示す証拠(家計簿、介護記録、領収書など)が必要です。何年も前のことを遡って証明するのは非常に困難です。
③ 相続人全員の合意が必要
これが最大の難所です。寄与分を認めると、他の相続人の取り分が減ります。そのため、話し合い(遺産分割協議)で他の兄弟が「そんなの当たり前だろ」と拒否すれば、家庭裁判所の調停や審判に持ち込むしかありません。
結果として、「頑張った人」が精神的にも肉体的にも疲弊し、家族関係が修復不可能になるケースが後を絶ちません。
「遺言書」が寄与分の悩みをすべて解決する
遺言書には、貢献度の高い相続人に対して、その寄与分に相当する額を法定相続分とは別に与える旨を明記することで、その努力に報いることができます。
遺言書の記載例(寄与した長男に報いるケース)
第○条 遺産分割の方法
遺言者は、遺言者の長男〇〇(氏名)が、長期間にわたり献身的に遺言者の療養看護に尽力した貢献(寄与)に報いるため、以下の財産を取得させる。
1.〇〇銀行 〇〇支店の預金のうち、金 1,000万円を長男〇〇に遺贈する。
2.上記以外の残りの遺産については、法定相続分に基づき分割する。
遺言による寄与分の指定のポイント
- 付言事項の活用
遺言の本文とは別に、「長男〇〇へ:長い間の介護、本当にありがとう。この財産は、あなたの尽力への感謝の気持ちです。」といった付言事項を加えることで、他の相続人の理解と納得を得やすくなります。 - 「遺贈」として指定する
法的に「寄与分」そのものを指定することはできませんが、寄与の対価として特定の財産を多く取得させる(遺贈する)ことで、実質的に報いることが可能です。 - 金額や理由を明記
「貢献に報いるため」と理由を付記することで、他の相続人に対する説明責任を果たし、遺言の公正さをアピールできます。
「公正証書遺言」が最強の証拠となる理由
寄与分や特別受益に関する主張は、金額が大きく、感情的な対立を生みやすいテーマです。
これらの内容を自筆証書遺言で残した場合、形式不備で無効になったり、筆跡をめぐって争いになったりするリスクがあります。
公証人が関与して作成される公正証書遺言であれば、内容の正確性と法的有効性が担保され、相続人全員に対して「これは被相続人の明確な最終意思である」という強い証拠を示すことができます。
まとめ
「家族なんだから、言わなくても分かってくれるはず」
「死んだ後のことは、残った者同士でうまくやってくれるだろう」
残念ながら、その考えが一番のトラブルを招きます。お金が絡むと、人は変わります。そして、頑張った人ほど、正当に評価されない時に深い傷を負います。
寄与分という「後出しの主張」で争わせるのではなく、親御様が元気なうちに「遺言書」という名の感謝状を用意しておくこと。それが、残された家族の絆を守る唯一の方法です。
「うちは財産が多くないから関係ない」と思っている方こそ、要注意です。相続争いは、意外にも数百万〜一千万円程度の「分けにくい財産」で最も激化します。
「自分のケースではどう書けばいいの?」
「介護の苦労をしっかり反映させたい」
そう思われた方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。あなたの想いを、法的効力のある「最高のラブレター」に変えるお手伝いをいたします。
初回相談は無料です。お気軽にご連絡ください。
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