こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。
「家族信託」は、認知症や将来の相続対策として非常に有効な手段ですが、この制度を実際に機能させるために絶対に欠かせない手続きがあります。それが、信託された金銭を管理するための「信託口口座(しんたくぐちこうざ)」の開設です。
この特殊な口座の理解なくして、家族信託は成り立ちません。今回は、信託口口座の基本から、なぜそこまで重要なのか、そしてそのメリット・デメリットを解説します。
信託口口座とは?— 信託専用の「金銭の金庫」
信託口口座とは、家族信託契約に基づき、信託された金銭だけを管理・運用するために、受託者(財産を管理する人)の名義で開設される特殊な銀行口座です。
通常の個人口座や法人口座とは区別され、名義には必ず「信託口」や「信託財産口」といった文言が付記されます。
口座名義の形式例
〇〇銀行受託者 [氏名](委託者 [氏名]) 信託口
名義は受託者の個人名が入りますが、この「信託口」という文言があることで、法的にこのお金は受託者個人のものではなく、信託の目的のために隔離された財産であることが明確になります。
信託口口座の3大メリット(開設の理由)
信託口口座の開設は、家族信託の法的効力と安全性を担保するために不可欠です。
メリット① 完璧な分別管理(公私混同の防止)
信託法では、受託者には信託財産と受託者自身の固有財産を明確に分けて管理する義務(分別管理義務)が課せられています。信託口口座を開設することは、この分別管理義務を確実に履行する、最もシンプルかつ強力な方法です。公私混同を避けることで、税務上の問題や、親族間での不信感・トラブルを防ぐ土台となります。
メリット② 倒産隔離機能の確保
これが信託の最大の強みの一つです。万が一、財産を管理している受託者個人が破産したり、多額の借金を負ったりした場合、その債権者は受託者個人の財産を差し押さえることができます。しかし、信託口口座内の金銭は、名義は受託者であっても法的に信託財産として分離されているため、差し押さえの対象から守られます。委託者や受益者の大切な財産を守る「金庫の鍵」の役割を果たします。
メリット③ 委託者死亡時の財産管理の継続性
委託者(親など)が亡くなると、その個人名義の銀行口座は原則として凍結され、相続手続きが完了するまで入出金ができなくなります。しかし、信託口口座の名義は委託者ではなく受託者であるため、委託者の死亡によって口座が凍結されることはありません。これにより、委託者の死後も、施設費用や医療費などの支払いを中断することなくスムーズに継続でき、遺族(受益者)の生活が守られます。
信託口口座のデメリットと開設時の注意点
メリットが大きい信託口口座ですが、開設・利用にはいくつかのデメリットと注意点があります。
デメリット① 開設の難易度が高い
信託口口座は特別な口座であるため、全ての金融機関が対応しているわけではありません。ネット銀行や一部の信用金庫などでは、開設そのものを断られるケースが多いです。開設可能な金融機関でも、契約書(公正証書)や登記簿など、多くの厳格な書類審査が必要となるため、開設までに時間がかかります。
デメリット② 手数料や費用の発生
通常の個人口座とは異なり、信託口口座は特別な管理体制を要するため、金融機関によっては口座管理や取引に対して所定の手数料が発生する場合があります。
注意点:個人口座でもいい?
信託口口座が開設できない場合に、受託者が「自分の個人口座を信託専用にする」という方法(信託専用の受託者個人口座)で代用されることがありますが、リスクもあります。
- 差し押さえリスク
受託者個人の債務によって差し押さえられるリスクが残ります。 - 対外的な証明の困難さ
税務署などから見ても、信託財産と個人財産の区別が難しくなり、厳格な帳簿と記録で信託財産であることを証明し続ける義務が生じます。
まとめ
信託口口座の開設手続きは、金融機関との事前交渉、法的な契約書の確認、必要書類の準備など、非常に煩雑です。
私たち行政書士は、家族信託の専門家として、以下の点でサポートを提供し、お客様の負担を大幅に軽減します。
- 金融機関選定の助言
信託契約の内容を伝え、スムーズな開設が可能な金融機関を選定・ご紹介します。 - 事前交渉と書類準備
金融機関の求める書式や書類(公正証書謄本、信託目録など)を正確に準備し、交渉を代行・同席することで、審査を円滑に進めます。
信託口口座は、単なる預金口座ではなく、家族信託という法的な仕組みを「生きたもの」にするための心臓部です。この最も重要なプロセスを確実に行い、安全で円満な家族信託を実現するために、ぜひ専門家にご相談ください。
家族信託専門士である行政書士が皆様の不安を安心に変えるお手伝いをさせていただきます
初回の相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
詳しくは行政書士わたなべ事務所まで


