こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。
近年、認知症対策の有効な選択肢として「家族信託」が広く知られるようになりました。
家族信託は、信頼できる家族に財産の管理を託す非常に便利な仕組みですが、信託契約を結んで終わりではありません。財産を預かった受託者には、法的な「重い義務」が課せられます。
その代表例が、定期的な「帳簿の作成」と「受益者への報告」です。
今回は、家族信託において受託者が必ず作成・備え付けなければならない「3つの報告書類」について、解説します。
家族信託の受託者に課される「報告義務」とは?
家族信託では、財産を管理する人(受託者)と、財産から得られる利益を受け取る人(受益者)が分かれます。
たとえ親子や夫婦の間であっても、受託者は「他人の財産を預かって管理している」という立場になります。そのため、信託法第37条において、財産の管理状況を明確に記録し、定期的に受益者へ報告することが義務付けられているのです。
具体的には、以下の3つの書類(帳簿等)を作成しなければなりません。
- 信託帳簿
- 信託財産の現在の状況を説明する計算書類
- 信託事務の処理に関する書類
これらを怠ると、任務懈怠(義務違反)を問われたり、他の親族との間で着服を疑われるなど、大きなトラブルに発展するリスクがあります。それぞれの書類の具体的な中身を見ていきましょう。
信託帳簿
信託帳簿とは、信託財産に関するすべてのお金の出入りや取引を、発生した順番に記録していく「信託専用の会計帳簿(日記帳・仕訳帳)」のことです。
- 主な記載内容
取引の日付、金額、取引の相手方、取引の理由(例:「〇月〇日、〇〇マンション修繕費として〇〇円支出」など) - 作成のタイミング
取引が発生する都度(遅滞なく)記録する必要があります。
分別管理の徹底
受託者自身の個人のお金と、信託で預かっているお金が混ざることは絶対に許されません(分別管理義務)。信託帳簿を日々つけることは、両者が完全に区別されていることを証明する最も強力な証拠になります。領収書やレシート、契約書などの証憑書類も、この帳簿と紐づけてセットで保管します。
信託財産の現在の状況を説明する計算書類
これは、日々の記録(信託帳簿)をベースに、年に1回、決まった時期(決算期)に作成する「1年間のまとめレポート」です。
一般的には、以下の2つの書類で構成されます。
- 損益計算書
この1年間で「いくら収入があり、いくら経費を使ったか」の合計。 - 財産目録
決算日時点で「何が、どこに、どれだけ残っているか」の一覧(現金、預金残高、不動産の有無など)。
信託事務の処理に関する書類
3つ目は、お金の動きではなく「受託者として、この1年間どんな活動(仕事)をしたか」を記録した業務報告書です。
- 主な記載内容:
- 信託不動産の管理を業者に委託した(管理契約の締結)
- 火災保険の見直しを行い、契約を更新した
- 自宅の売却に向けて、測量業者や解体業者を選定した
- 受益者(親)の体験入所の段取りを行い、費用を支払った
お金の計算だけでは見えてこない、「受託者がサボらずに、受益者のために適切な判断と行動をしているか」を身内に証明するための大切な書類です。
受託者が押さえておくべき運用のルールと保存期間
これら3つの書類を運用するにあたり、受託者が絶対に知っておくべき共通ルールが2つあります。
毎年1回の「受益者への報告」
作成した「計算書類」と「事務報告書」は、毎年1回、一定の時期に受益者へ開示し、報告しなければなりません(※信託契約で別段の定めがある場合を除きます)。 認知症対策の場合、受益者である親御さんが書類の内容を理解できないことも多いですが、その場合は「信託監督人」や「受益者代理人」が設定されていれば、その専門家(行政書士など)に対して報告を行うことになります。
書類の「10年間保存義務」
作成した帳簿や計算書類、そして領収書や通帳のコピーなどの関連書類は、10年間保存する義務があります。信託が終了した後も、過去の管理状況を証明するために破棄してはいけません。
まとめ
家族信託は、家族の絆に基づいた自由度の高い制度ですが、法的な書類作成義務を怠ると、将来の相続時に「他の兄弟から財産の使い込みを疑われる」といった最悪のトラブルを招きかねません。
収益不動産があるケースでも、実は登場する勘定科目(信託口預金、建物・土地、預り敷金、信託借入金、元本など)は非常にシンプルで、企業会計ほど複雑ではありません。大切なのは、「科目の多さ」ではなく「毎年の現状を正しく見える化しておくこと」です。
当事務所では、家族信託の設計・契約書の作成だけでなく、スタートした後の「受託者様の帳簿作成・報告書作成のアドバイス」や「信託監督人としての伴走サポート」も行っております。
「毎年の報告書類をどう作ればいいか不安」「実務の運用の仕方を教えてほしい」という受託者様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。家族信託専門士である行政書士がお話をお伺いします。
初回の相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
詳しくは行政書士わたなべ事務所まで

