こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。
「遺言書」というと、一度書いたらもう変えられない、といったイメージをお持ちではないでしょうか?
実は、そんなことはありません。人生は変化の連続です。ご家族の状況、財産の内容、ご自身の考え方など、時が経てば変わっていくのは自然なことです。
遺言書は、ご自身の「最後の意思」を託す大切な書類。その意思が変わったのであれば、それに合わせて遺言書も書き直すべきです。
今回は、遺言書の「書き直し」について、その方法や注意点を解説していきます。
遺言書はいつでも「書き直し」できる!
民法には、「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができる」と定められています(民法第1022条)。
つまり、遺言書を書いた後でも、ご自身の気が変わったらいつでも書き直すことができるのです。
では、具体的にどのようなタイミングで遺言書の書き直しを検討すべきでしょうか。
- 家族構成が変わった時
結婚、離婚、お子様の誕生、孫の誕生など - 財産の内容が変わった時
不動産の売却、新たな不動産の購入、多額の借入など - 特定の相続人が先に亡くなった時
遺言で指定した相続人や受遺者がご自身より先に亡くなった場合 - 考え方が変わった時
相続人同士の関係性が変わったり、特定の財産を特定の人物に引き継がせたいと強く思うようになった時
このような人生の節目や変化があった際は、遺言書の内容が現状に合っているか確認し、必要に応じて書き直すことを強くお勧めします。
遺言書の書き直し・撤回の3つの方法
遺言書を書き直す方法は、主に3つあります。
新しい遺言書を作成する
これが最も一般的で、一番確実な方法です。
新しい遺言書を作成すると、その内容が日付の新しい方が優先されます。例えば、2025年1月に書いた遺言書と、2025年12月に書いた遺言書があれば、新しい12月の遺言書が有効となります。
この際、古い遺言書を保管したままにしていても問題ありません。新しい遺言書の内容が、古い遺言書の内容と「矛盾する部分」については、新しい遺言書が優先されます。
【ポイント】 新しい遺言書には、「以前作成した遺言書は、すべて撤回する」という一文を明記しておくことをお勧めします。これにより、新旧の遺言書が矛盾する部分を巡ってのトラブルを防ぐことができます。
古い遺言書を破棄する
遺言書を物理的に破ったり、燃やしたりして撤回する方法です。
【注意点】 遺言書を破棄する際は、「遺言者が故意に破棄した」ことが明確である必要があります。もし、相続人などの第三者が破棄してしまった場合、その行為は相続欠格事由に該当し、財産を相続する権利を失う可能性があります。
また、古い遺言書を破棄しただけでは、新たな遺言書を作成するまで、遺言書がない状態になってしまいます。この状態で万が一のことがあれば、遺産分割協議が必要となり、かえってトラブルの原因になりかねません。
そのため、古い遺言書を破棄する場合は、新しい遺言書が完成してから行うようにしましょう。
遺言書に加筆・修正する
自筆証書遺言の場合、遺言書の本文に加筆・修正することで内容を変更できます。ただし、その方法には厳格なルールがあります。
【自筆証書遺言の加筆・修正のルール】
- 変更する場所に二重線を引く
- 訂正印を押す
- 欄外に「〇行目〇文字を削除、〇文字を加筆」といった具体的な訂正内容を記載する
- 訂正内容の記載の横に署名と押印をする
これらのルールが守られていないと、修正箇所が無効になったり、遺言書全体が無効と判断されたりするリスクがあります。
【注意点】 法務局で保管している自筆証書遺言や公正証書遺言は、この方法では修正できません。新たに作成し直す必要があります。
遺言書書き直しの注意点
遺言書を書き直す際には、以下の点に注意してください。
- 遺言書の発見場所
新しい遺言書を書いても、古い遺言書が発見された場合、相続人同士が混乱する可能性があります。古い遺言書は、新しい遺言書が完成した後に処分するか、「以前の遺言書はすべて撤回する」旨を明確に記載しましょう。 - 証人や立会人
公正証書遺言の場合、新たな遺言書を作成する際は、以前と同じ証人でなくても構いません。 - 費用
新しい公正証書遺言を作成する場合、その都度、公証役場の手数料や専門家への報酬が発生します。
なお、自筆証書遺言から公正証書遺言への書き直しが可能ですし、公正証書遺言から自筆証書遺言への書き直しも可能です。
まとめ
遺言書は、一度書いたら終わりではありません。
ご自身の人生の変化に合わせて、遺言書も「育てていく」という考え方が非常に大切です。
「書き直したいけど、どうすればいいか分からない」「何を書けばいいのか不安」といったお悩みがございましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。
ご自身の意思を確実に反映させるための遺言書の作成はもちろん、既に作成済みの遺言書の見直しや書き直しについても、専門家として最適なアドバイスをさせていただきます。
初回相談は無料です。お気軽にご連絡ください。
詳しくは行政書士わたなべ事務所まで