親なき後問題の救世主?安心な未来を拓く家族信託の仕組みを行政書士が解説

家族信託

こんにちは 行政書士渡辺事務所の渡辺晋太郎です。

近年、高齢化が進む日本で、多くの方が直面する大きな課題の一つに「親なき後問題」があります。これは、知的障がいや精神障がいを持つお子様が、ご両親が亡くなった後に、誰が財産管理や生活の支援を行うのか、という切実な問題です。

「親が亡くなったら、残された財産は子どもが相続するから大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、障がいを持つお子様の場合、ご自身で財産を管理したり、生活上の契約を結んだりすることが難しいケースが少なくありません。

もしご両親が何の手立てもしないまま亡くなってしまうと、お子様の財産は事実上「凍結」され、生活に必要な費用を捻出することすら困難になる可能性があります。このような状況は、ご両親にとって大きな不安であり、残されたお子様の生活に深刻な影響を及ぼしかねません。

では、この「親なき後問題」を解決するために、どのような対策があるのでしょうか。今回は、その有効な手段の一つとして注目されている「家族信託」について、行政書士の視点から解説します。


「親なき後問題」を解決する、従来の制度の課題

家族信託が登場する以前は、親なき後問題の対策として、主に以下の二つの制度が利用されてきました。

成年後見制度

成年後見制度は、判断能力が不十分な方を法的に保護するための制度です。家庭裁判所が選任した成年後見人が、財産の管理や生活上の契約などを代わりに行います。

<成年後見制度の課題>

  • 家庭裁判所の監督
    成年後見人は家庭裁判所の監督下に置かれ、財産の使い方に制約が生じることがあります。柔軟な資産運用が難しいケースも。
  • 後見人への報酬
    後見人には、専門職(弁護士・司法書士など)が就任する場合が多く、その報酬は被後見人の財産から支払われます。これは、お子様の生活費を圧迫する可能性があります。
  • 本人の意思反映
    後見制度は本人の保護を目的としているため、ご両親が望む「〇〇をしてあげたい」という細やかな思いを反映しにくい側面があります。

遺言

遺言書を作成することで、ご両親が亡くなった後の財産の分け方を指定できます。

<遺言の課題>

  • 財産管理の限界
    遺言は、財産を誰に、どれだけ渡すかを決めるものであり、お子様が亡くなるまでの長期的な財産管理や、日々の生活支援を包括的に指定することはできません。
  • 二次相続への対応
    お子様が亡くなった後、残った財産を誰に引き継がせるか(二次相続)を遺言で指定することはできません。

このように、従来の制度にはそれぞれ課題があり、ご両親が望む「お子様が安心して暮らせる未来」を完全に保障することは難しいのが現状でした。

家族信託が「親なき後問題」を解決する理由

そこで注目されているのが、新しい財産管理の仕組みである「家族信託」です。家族信託は、ご両親の希望を細やかに反映した、オーダーメイドの支援体制を構築することができます。

家族信託では、以下のように役割を定めます。

  • 委託者: 親
  • 受託者: きょうだいなど、信頼できる親族
  • 受益者: 親(死後は障がいある子ども)

この仕組みを利用することで、以下のようなメリットが得られます。

ご両親の意向を反映した柔軟な財産管理

家族信託では、信託契約書にご両親の思いを具体的に盛り込むことができます。

  • 「毎月〇〇万円を生活費として引き出すこと」
  • 「将来の施設入所費用として、〇〇万円を確保しておくこと」
  • 「万が一の病気に備えて、〇〇病院での治療費に充てること」

このように、ご両親が亡くなった後も、お子様が安心して暮らせるよう、具体的な資金計画を立てて、それを実行する役割を信頼できるご親族に託すことができます。

柔軟な資産運用が可能

家庭裁判所の監督を受ける成年後見制度と異なり、家族信託は当事者間の契約に基づいています。これにより、信託契約で定められた範囲内で、柔軟な資産運用を行うことが可能です。

二次相続(受益者死亡後の財産の行方)まで指定できる

これが家族信託の最大の強みの一つです。

信託契約書の中で、「受益者である子どもが亡くなった後、残った財産は兄弟(受託者)に引き継がせる」といった、二次相続以降の財産の承継先まで指定できるのです。これにより、財産が意図しない人間に渡ってしまうのを防ぎ、ご両親の財産を大切に守ることができます。

家族信託を検討する際の注意点

家族信託は、親なき後問題の非常に有効な解決策ですが、万能ではありません。

  • 受託者の存在
    信頼できる受託者(ご兄弟など)がいることが大前提となります。受託者は、責任を持って財産を管理する役割を担います。
  • 税務上の注意
    家族信託には、所得税や相続税など、さまざまな税金が関わってきます。契約内容によっては、思わぬ課税が生じる可能性もありますので、専門家と連携して慎重に設計する必要があります。
  • 本人の意思能力
    家族信託の契約は、ご両親がご自身の意思で契約を結べるうちに始めなければなりません。認知症などで判断能力を失ってからでは、家族信託は利用できませんので、早めの準備が不可欠です。

まとめ

「親なき後問題」は、ご両親の将来への大きな不安の一つです。しかし、家族信託という新しい仕組みを活用することで、その不安を解消し、障がいを持つお子様が、ご両親が亡くなった後も安心して暮らせる環境を整えることができます。

家族信託は、ご両親の愛情を形に残し、未来へ引き継ぐための大切な手段です。もし、「うちの子の将来、どうしよう…」と悩んでいらっしゃる方がいれば、ぜひ一度、家族信託の専門家である行政書士にご相談ください。

ご家族一人ひとりの状況に合わせた最適なプランを一緒に考え、お手伝いさせていただきます。
初回の相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
詳しくは行政書士わたなべ事務所まで

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