認知症対策になる?銀行代理人制度について行政書士が解説!

家族信託

こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。

人生100年時代。医療の進歩により長寿が叶う一方で、高齢化に伴い「認知症」は誰にとっても身近な問題となりました。もし、あなたや大切なご家族が認知症になったら、日々の生活はどうなるでしょうか?特に大きな課題となるのが、銀行預金の管理です。

「家族だから大丈夫」「まさか自分に限って」そう思っていても、認知症が進行すると、本人だけでなく家族ですら銀行口座からお金を引き出せなくなる「資産凍結」のリスクがあります。医療費、介護費用、日々の生活費…必要なお金が使えなくなる事態は、想像以上に深刻です。

このような事態に備えるため、近年注目されているのが「銀行代理人制度」です。行政書士として、皆さんの「未来の安心」をサポートする立場から、この制度について詳しく解説します。

認知症と銀行取引の現実

「家族なのに、なぜ親のお金が下ろせないの?」

認知症に関するご相談で、最も多く耳にするお悩みがこれです。金融機関は、預金者の財産を不正利用や詐欺から守るために、厳格な本人確認を義務付けています。本人の判断能力が低下していると判断された場合、たとえ配偶者や子であっても、その意思が確認できない限り、預金の引き出しや送金といった取引は原則として制限されます。

これは、金融機関が善良な顧客保護のために行う措置であり、決して意地悪をしているわけではありません。しかし、これにより介護費用や医療費など、本当に必要なお金が引き出せないという現実が生まれているのです。

銀行代理人制度とは?

このような課題に対し、金融機関が導入・拡充を進めているのが「銀行代理人制度」です。

この制度は、預金者(委託者)が、将来の判断能力低下に備えて、信頼できる人(多くは家族)を「任意代理人」としてあらかじめ指名し、その代理人が本人の代わりに銀行取引を行えるようにする仕組みです。

具体的な仕組み

  • 契約の締結
    本人(預金者)が判断能力のあるうちに、銀行と任意代理人契約を締結します。この際、代理人となる人も同席し、契約内容を確認します。
  • 代理人の選任
    契約書の中で、誰を代理人とするか、代理人にどのような権限を与えるか(例:預金の引き出し、振り込み、公共料金の支払いなど)を具体的に定めます。
  • 代理権の発生条件
    多くのケースでは、「本人の判断能力が低下したと認められた場合(医師の診断書などにより)」といった条件が設定されます。
  • 代理権の行使
    条件が満たされた場合、代理人は本人に代わって銀行取引を行うことができます。銀行によっては、「代理人カード」を発行し、ATMでの引き出しを可能にするサービスもあります。

認知症対策としての有効性

銀行代理人制度は、認知症による資産凍結を防ぐ上で非常に有効な手段と言えます。

  • 資産凍結の回避
    本人の判断能力が低下しても、代理人を通じて必要な資金を引き出せるため、医療費や介護費用、生活費の支払いに困ることがなくなります。
  • 手続きの継続
    本人ができなくなった銀行取引を代理人が継続できるため、預金管理の面で途切れることがありません。
  • 利便性の向上
    特に代理人カードが発行される場合は、ATMで必要な時に現金を引き出すことができるため、ご家族の負担が軽減されます。

銀行代理人制度のメリットとデメリット

どのような制度にもメリットとデメリットがあります。銀行代理人制度を検討する上で、これらを理解しておくことが重要です。

メリット

上述の「認知症対策としての有効性」にて記載した項目に加え、下記のメリットがあります。

  • 比較的シンプルで身近な制度
    銀行が提供するサービスであるため、比較的馴染みやすく、理解しやすいのが特徴です。
  • コストが抑えられる場合がある
    家族信託などと比較して、契約費用が無料または低額で済む場合があります(銀行による)。
  • 銀行の専門家が関与
    契約内容や手続きについて、銀行の担当者から直接説明やアドバイスを受けられます。
  • 必要最低限の範囲で対応可能
    預金管理に特化しているため、「まずは銀行預金だけどうにかしたい」という場合に有効です。

デメリット

  • 金融機関によってサービス内容が異なる
    代理人制度の有無、契約内容、代理権の範囲、代理人カードの有無などは、銀行によって大きく異なります。複数の銀行口座がある場合は、それぞれの銀行で確認が必要です。
  • 本人の判断能力が前提
    契約を締結する時点で、本人が契約内容を理解し、判断できる能力がなければ利用できません。認知症が進行してからでは手遅れになります。
  • 代理人の責任と信頼関係
    代理人には、本人の財産を適切に管理する重大な責任が伴います。家族間での十分な話し合いと、代理人への絶対的な信頼が不可欠です。
  • 「家族が勝手に…」のリスク
    不幸にも代理人が預金を私的に流用するといった事態が発生した場合、トラブルになる可能性があります。

まとめ

認知症は、決して他人事ではありません。しかし、適切な準備をしておくことで、ご本人もご家族も安心して日々を送ることができます。

銀行代理人制度は、預貯金の管理に特化し、シンプルに認知症対策をしたいと考えるなら、有効な選択肢となります。特に、資産規模が大きくなく、複雑な財産管理を必要としない場合に適しています。

不動産を含む複数の財産があり、認知症対策だけでなく、将来の相続まで見据えた包括的な財産管理をしたいと考えるなら、家族信託が強力な選択肢となります。家族構成や財産の内容に合わせて、きめ細やかな設計が可能です。

当事務所では、皆様の財産と未来を守るため、親身に寄り添い、最適な認知症対策をご提案いたします。まずは「何から始めたら良いか分からない」という状態でも構いません。お気軽にご相談ください。
初回の相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
詳しくは行政書士わたなべ事務所まで


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