故人の口座凍結①なぜ凍結される?その仕組みについて行政書士が解説

相続

こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。

ご家族を亡くされた際、悲しみに暮れる間もなく、様々な手続きに直面されることと思います。その中でも、故人の預貯金口座が凍結されるという話を聞き、不安に感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論から申し上げますと、「故人の口座が凍結される」というのは事実です。金融機関は、口座名義人の死亡を知ると、その口座を凍結する運用を行っています。これは、故人の財産を守り、相続人による適正な相続手続きが完了するまで、勝手な引き出しや誤った処理を防ぐための、非常に重要な措置なのです。

今回は、故人の口座凍結の仕組み、凍結された口座の解除方法、そしてそれに伴う注意点について詳しく解説していきます。

なぜ口座は凍結されるのか?

金融機関が故人の口座を凍結する主な理由は以下の通りです。

相続財産の保全

故人の預貯金は、その方の相続財産の一部です。相続人が複数いる場合、遺産分割協議が成立する前に一部の相続人が勝手に引き出してしまったり、あるいは相続人以外の第三者が不正に引き出したりするリスクを防ぐため、口座を凍結して財産を保全します。

相続人の確定と遺産分割の円滑化

誰が相続人であるかを確定し、遺産分割協議が整うまでは、口座の取引を停止することで、後に発生しうるトラブルを未然に防ぎます。

相続税対策

相続税の申告においては、故人の死亡時の財産状況を正確に把握する必要があります。口座が凍結されることで、その時点での残高が確定し、相続税の計算がしやすくなります。

金融機関の責任回避

万が一、相続人ではない人物が故人の預貯金を引き出してしまった場合、金融機関が責任を追及される可能性があります。このようなリスクを回避するためにも、死亡の事実が判明次第、口座を凍結するのです。

口座凍結はいつ、どのように行われるのか?

口座凍結は、金融機関が口座名義人の死亡を知った時点で実施されます。具体的には、以下のようなケースで死亡の事実が金融機関に伝わることが多いです。

  • 相続人からの連絡
    相続人が死亡の事実を金融機関に連絡した場合が最も一般的です。
  • 葬儀会社からの情報
    提携している葬儀会社から情報が伝わることもあります。
  • 新聞のお悔やみ欄など
    稀ではありますが、公開情報から金融機関が死亡を知ることもあります。

死亡の連絡を受けた金融機関は、通常、すぐに口座を凍結します。ATMでの引き出しはもちろん、インターネットバンキング、窓口での取引、公共料金の引き落としなども一切できなくなります。

凍結された口座からお金を引き出すには?

口座が凍結されてしまうと、葬儀費用や当面の生活費など、急にお金が必要になった場合でも引き出すことができず、困ってしまうケースも少なくありません。凍結された口座からお金を引き出すには、原則として、相続人全員の同意と所定の手続きが必要となります。

具体的な手続きは金融機関によって多少異なりますが、一般的には以下の書類が必要となります。

  1. 故人の出生から死亡までの戸籍謄本
  2. 相続人全員の戸籍謄本
  3. 相続人全員の印鑑証明書
  4. 相続人全員の実印
  5. 遺言書もしくは遺産分割協議書
  6. 金融機関所定の払戻請求書
  7. 相続人代表者の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)

これらの書類を揃え、金融機関に提出することで、預貯金の払い戻しや名義変更の手続きを進めることができます。

口座凍結解除までの注意点と対策

公共料金やクレジットカードの引き落とし

故人の口座から公共料金(電気、ガス、水道など)やクレジットカードの引き落としが行われている場合、口座凍結によってこれらの支払いが滞ってしまう可能性があります。電気やガスが止まってしまう、カードの延滞が発生するといった事態を避けるためにも、できるだけ早く引き落とし口座の変更手続きを行うか、一時的に他の口座から支払うなどの対応が必要です。

葬儀費用の準備

口座が凍結されると、故人の預貯金から葬儀費用を捻出することが困難になります。生前から葬儀費用について話し合っておく、または現金や別の口座にまとまった金額を用意しておくなどの対策が有効です。

相続手続きの長期化

相続人が多い場合や、遺産分割協議が難航するようなケースでは、口座凍結の解除まで時間がかかることがあります。

「仮払い制度」の利用

相続人が金融機関の窓口で故人の預貯金の一部を単独で引き出せる「仮払い制度」があります。これにより、遺産分割協議がまとまる前でも、一定額(預貯金額の3分の1に法定相続分を乗じた額、ただし1金融機関につき150万円が上限)であれば、生活費や葬儀費用などに充てるために引き出すことが可能になりました。ただし、この制度を利用するためには、故人の戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、本人確認書類などが必要です。

まとめ

故人の口座凍結は、相続財産を保護するための重要な措置です。死亡の事実が金融機関に伝わると、口座はすぐに凍結され、原則として相続人全員の合意がなければお金を引き出すことはできません。

葬儀費用や当面の生活費など、緊急でお金が必要になる場合に備え、生前から対策を講じておくこと、そして口座が凍結されてしまった場合は、速やかに相続手続きを進めることが重要です。

相続手続きは複雑で専門的な知識を要するため、お困りの際はぜひにご相談ください。皆様の負担を少しでも軽減できるよう、親身になってサポートさせていただきます。
また、口座凍結対策として有効な家族信託の組成サポートも行っております。
初回の相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
詳しくは行政書士わたなべ事務所まで

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