こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。
今回は、高齢化が進む現代社会において、私たちにとって決して他人事ではない「成年後見制度」について、そのメリットとデメリットを掘り下げて解説していきます。
「成年後見制度」という言葉を聞いたことはあっても、具体的にどのような制度なのか、ご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。この制度は、判断能力が不十分になった方を法的に保護し、支援するための重要な仕組みです。しかし、その利用には良い面もあれば、考慮すべき点も存在します。
将来の不安を少しでも軽減するためにも、ぜひ最後までお読みいただき、成年後見制度への理解を深めていただければ幸いです。
成年後見制度とは?
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な方を、法律面や生活面で保護・支援する制度です。詳しくは下記記事を参照ください。
今回は、そのメリットとデメリットを見ていきましょう。
成年後見制度のメリット
まずは、成年後見制度がもたらすメリットについてです。判断能力が不十分になったご本人、そしてご家族にとって、様々な面で安心を提供してくれる制度と言えるでしょう。
本人の財産が法的に保護される
成年後見制度の最大のメリットは、ご本人の財産が法的に確実に保護される点です。
例えば、判断能力が低下した方が悪質な詐欺被害に遭ったり、不必要な高額な契約をさせられたりするケースは少なくありません。成年後見人が選任されれば、後見人が本人に代わって財産を管理し、不当な契約を取り消すことができます。これにより、ご本人の大切な財産が守られ、生活の基盤が揺らぐことを防ぎます。
また、相続が発生した際にも、後見人が本人の法定相続分を確実に主張し、財産を保全する役割を果たします。
医療・介護に関する意思決定がスムーズに
医療や介護の現場では、本人の意思能力が低下している場合、手術や治療方針、施設入所の可否など、重要な意思決定が困難になることがあります。
成年後見人は、ご本人の心身の状態や生活状況を考慮し、最も適切な医療や介護サービスが受けられるよう、医療機関や介護事業者との間で必要な契約締結や手続きを進めることができます。これにより、ご本人にとって最善の選択が行われることを保証し、適切なケアが滞りなく提供されるようになります。
不動産や預貯金の管理・処分が可能になる
判断能力が不十分になると、例えば自宅を売却して介護施設への入所費用を賄いたい、あるいは定期預金を解約して生活費に充てたいといった場合でも、本人の意思確認ができないため、手続きを進めることができません。
成年後見人がいれば、家庭裁判所の許可を得て、ご本人に代わって不動産の売却や預貯金の解約といった財産に関する手続きを適法に行うことができます。これにより、ご本人の生活状況や資金ニーズに応じた柔軟な財産管理が可能になります。
成年後見制度のデメリット
一方で、成年後見制度には、利用を検討する上で考慮すべきいくつかのデメリットも存在します。これらの点を理解した上で、慎重に判断することが重要です。
制度利用開始までの手続きに時間と費用がかかる
成年後見制度を利用するには、家庭裁判所への申立てが必要です。この手続きには、申立書の作成、医師の診断書取得、親族関係書類の収集など、多くの書類準備と手続きが必要となり、数ヶ月程度の時間と、数万円から十数万円程度の費用(診断書料、印紙代、郵券代、鑑定費用など)がかかる場合があります。
特に、ご本人の判断能力について鑑定が必要と判断された場合、さらに時間と費用がかさむ可能性があります。
成年後見人の選任を自分で決められない(法定後見の場合)
法定後見制度の場合、成年後見人は家庭裁判所が選任します。申立時に候補者を立てることはできますが、最終的に誰が後見人になるかは裁判所が決定します。必ずしも希望する親族が選任されるとは限らず、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選任されることも少なくありません。
これにより、これまで親族が担ってきた役割が第三者である後見人に委ねられることになり、ご本人やご家族にとっては、信頼関係の構築やコミュニケーションに時間を要する可能性があります。
後見人への報酬が発生する
成年後見人には、その職務に対する報酬を支払う必要があります。この報酬は、ご本人の財産の中から支払われることになります。報酬額は、管理する財産の額や後見事務の内容によって家庭裁判所が決定しますが、1ヶ月あたり2〜5万円ほどかかります。
法定後見は本人が死亡するか、判断能力を回復するまで続き、それ以外の理由で辞めることはできません。現時点では認知症を直すことはできませんので、一度始めると本人が死亡するまで、報酬額を支払う必要があります。10年間当制度を利用すると、480〜1,200万円かかる計算になります。
財産処分の自由度が制限される
成年後見人による財産管理は、ご本人の保護を最優先するため、財産の売却や大きな投資など、重要な財産処分を行う際には、家庭裁判所の許可が必要となります。
例えば、自宅を売却して、より利便性の高い場所に移転したいと思っても、後見人が本人の生活にとって必要不可欠と判断しない限り、自由に売却することはできません。これは、ご本人の財産が不利益に利用されることを防ぐための仕組みではありますが、ある程度の自由度が失われるという側面も持ち合わせています。
家族の関与が制限される場合がある
成年後見人が選任されると、これまで家族が担ってきた財産管理や契約行為について、原則として後見人が中心となって行います。これにより、家族が直接ご本人の財産に触れる機会が制限される場合があります。
良かれと思ってご本人のために行った行為でも、後見人を通して手続きが必要となるため、ご家族によっては「やりにくさ」を感じるかもしれません。ただし、後見人はご家族と連携しながら、ご本人の最善の利益のために職務を行うのが原則です。
まとめ
ここまで、成年後見制度のメリットとデメリットについて詳しく見てきました。
この制度は、ご本人の判断能力が不十分になった際に、その財産と生活を法的に保護し、安心して暮らせるようにするための非常に重要な仕組みです。悪質な詐欺や不適切な契約から身を守り、医療や介護に関する適切な意思決定を支援するなど、多くのメリットがあります。
一方で、手続きの複雑さ、費用、後見人選任の自由度の制限、財産処分の制約といったデメリットも存在します。これらの点を十分に理解し、ご本人やご家族の状況に合わせて、慎重に検討することが大切です。
成年後見制度について疑問や不安をお持ちでしたら、当事務所へお気軽にご相談ください。
初回の相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
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