もう悩まない!認知症対策②成年後見制度の仕組みを行政書士が解説

家族信託

こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。

以前認知症対策として「家族信託」をご紹介しましたが、その中でも少しだけ触れた後見制度についてご紹介します。家族信託同様に成年後見制度も認知症対策として有効です。ただ、「その言葉は聞いたことあるが、詳しくはよくわからない」という方も多いと思いますので、今回は成年後見制度の仕組みについて解説していきます。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症、知的障がい、精神障がいなどにより、ご自身で物事を判断する能力が十分でない方を法的に保護し、支援するための制度です。具体的には、家庭裁判所が選任した成年後見人、保佐人、補助人(以下「後見人等」といいます)が、本人の代わりに財産を管理したり、生活や医療に関する手続きを行ったりすることで、本人の権利や財産を守ります。

成年後見制度は、大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。

法定後見制度

法定後見制度は、すでに判断能力が不十分になっている方を対象に、家庭裁判所が本人の判断能力の程度に応じて、後見人、保佐人、補助人のいずれかを選任する制度です。本人の保護の必要性に応じて、支援の範囲が異なります。
症状の重い順で、後見→保佐→補助となります。

後見(こうけん)

  • 対象となる方
    判断能力が常に欠けている状態の方(例:重度の認知症で意思疎通が困難な方など)
  • 援助者
    成年後見人
  • 主な役割
    本人の財産に関するすべての法律行為を代理で行うことができます。また、本人が行った不利益な法律行為(日常生活に関する行為を除く)を取り消すことができます。
  • 特徴
    最も広範な保護と支援が必要な方が対象となります。成年後見人は、本人の財産を管理し、生活状況に配慮しながら、必要な契約や手続きを代わりに行います。

保佐(ほさ)

  • 対象となる方
    判断能力が著しく不十分な方(例:日常的な買い物はできるが、不動産の売買や金銭の貸し借りなどの重要な財産行為は一人では難しい方)
  • 援助者
    保佐人
  • 主な役割
    民法で定められた特定の重要な法律行為(借金、不動産の売買、相続の承認・放棄など)について、本人が行う際に同意を与える権利(同意権)と、本人が同意を得ずに行った場合にそれを取り消す権利(取消権)を持ちます。また、家庭裁判所の審判により、特定の法律行為について代理権が与えられることもあります。
  • 特徴
    本人の意思を尊重しつつ、重要な財産行為についてサポートします。保佐人は、本人が重要な法律行為を行う際に、その内容を理解しているかを確認し、適切な判断ができるように支援します。

補助(ほじょ)

  • 対象となる方
    断能力が不十分な方(例:重要な財産行為も自分でできるかもしれないが、不安があるので援助を受けたい方)
  • 援助者
    補助人
  • 主な役割
    家庭裁判所の審判により、特定の法律行為について同意権や取消権、代理権の一部が与えられます。3つの類型の中で、最も本人の自己決定権が尊重される形です。
  • 特徴
    本人が希望する範囲で、必要な支援を受けられます。補助人は、本人が特定の法律行為を行う際に、必要な情報提供や判断のサポートを行い、本人の意思決定を尊重します。

法定後見制度の利用手続きの流れ

  1. 申立て
    本人、配偶者、四親等内の親族などが、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。
  2. 審理
    家庭裁判所が、提出された書類(診断書、戸籍謄本など)、本人や関係者との面談、必要に応じて医師による鑑定などを通じて、本人の判断能力の程度や後見開始の必要性を判断します。
  3. 審判
    家庭裁判所が、後見・保佐・補助のいずれかを開始する旨の審判をし、同時に適切な後見人等を選任します。
  4. 告知・確定・登記
    審判の内容が関係者に告知され、不服申立てがなければ確定します。その後、法務局に後見登記がされます。

任意後見制度

任意後見制度は、本人がまだ十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ信頼できる人(任意後見受任者)を選び、その人に財産管理や身上監護に関する事務を委任する契約(任意後見契約)を公正証書で結んでおく制度です。

そして、実際に判断能力が不十分になったときに、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで、任意後見契約の効力が発生し、任意後見受任者が任意後見人として活動を開始します。

法定後見との主な違い

  • 援助者(任意後見人)を自分で選べる
    法定後見では家庭裁判所が後見人等を選任しますが、任意後見では本人が信頼できる人(親族、友人、専門家など)を事前に選ぶことができます。
  • 支援内容を自分で決められる
    法定後見では法律で定められた範囲で援助が行われますが、任意後見では契約内容の範囲内で、本人の希望に応じた柔軟な支援内容を定めることができます。
  • 判断能力があるうちに契約する
    将来に備えるための制度であり、本人の意思が尊重されます。

任意後見制度の利用手続きの流れ

  1. 任意後見契約の締結
    本人と任意後見受任者となる方が、公証役場で任意後見契約を公正証書で作成します。契約内容には、委任する事務の範囲(財産管理、身上監護など)や任意後見人の権限などを定めます。
  2. 任意後見監督人の選任申立て
    本人の判断能力が低下した後、本人または親族などが、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。
  3. 家庭裁判所による審理
    家庭裁判所は、提出された書類や医師の診断書などに基づいて、本人の判断能力の程度を確認します。
  4. 任意後見監督人の選任審判
    家庭裁判所が、任意後見監督人を選任する審判を行います。
  5. 任意後見監督人の選任登記
    選任された任意後見監督人の情報が法務局に登記されます。
  6. 任意後見の開始
    任意後見監督人の選任登記後、任意後見人は任意後見契約に基づいた支援を開始します。任意後見監督人は、任意後見人の業務を監督し、本人の利益が守られるようにチェックします。

まとめ

成年後見制度は、判断能力が不十分になった方を法的に保護し、尊厳ある生活を支えるための重要な仕組みです。法定後見と任意後見の2種類があり、それぞれに特徴と手続きが異なります。

仕組みの説明だけでも長くなってしまいましたので、成年後見制度を利用するにあたってのメリット・デメリットについては後日ご紹介いたします。

成年後見制度について疑問や不安をお持ちでしたら、当事務所へお気軽にご相談ください。
初回の相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
詳しくは行政書士わたなべ事務所まで

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