受益者代理人とは?認知症対策に欠かせない仕組みを行政書士が解説

家族信託

こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。

最近、特に注目を集めている家族信託で忘れてはいけないのが「受益者代理人(じゅえきしゃだいりにん)」の存在です。

「名前は聞いたことがあるけれど、具体的に何をする人なの?」
「必ず立てないといけないの?」といった疑問を抱えている方は少なくありません。

今回は、家族信託をより安全に、そして円滑に進めるための要となる「受益者代理人」について、わかりやすく解説します。

受益者代理人とは?

家族信託には、大きく分けて3つの役割が登場します。

  1. 委託者: 財産を預ける人
  2. 受託者: 財産を管理・運用する人
  3. 受益者: 財産から得られる利益を受け取る人

通常、信託が始まると「受益者」は、自分の代わりに財産を管理している「受託者」が正しく仕事をしているかチェックする権利を持ちます。

しかし、もしお父様が認知症などで判断能力を失ってしまったらどうなるでしょうか? 受託者が勝手にお金を使っていないか、報告書は正しいか……。これらをチェックすることが難しくなります。

そこで、受益者に代わってこれらの権利を行使する「ガードマン」のような存在が必要になります。これが「受益者代理人」です。

受益者代理人が持つ「4つの大きな権限」

受益者代理人は、受益者本人と同等の、非常に強力な権限を持ちます。具体的には以下の通りです。

① 受託者の監視・監督

受託者に対して「収支報告書を見せてください」「通帳のコピーを確認させてください」と求めることができます。これにより、身内同士の「なあなあ」な管理を防ぎます。

② 信託内容の変更・終了への同意

状況が変わって信託契約の内容を少し変えたいときや、信託を終わらせたいとき、受益者に代わって「同意」のハンコをおすことができます。

③ 受託者の解任と選任

万が一、受託者が不正を働いたり、病気で管理ができなくなったりした場合、その受託者を辞めさせ、新しい受託者を選ぶ権利を行使できます。

④ 給付の請求

「お父様の生活費や施設費が足りないから、信託財産から支出してください」と受託者に請求することができます。

なぜ「受益者代理人」を置くべきなのか?

行政書士として実務に携わる中で、受益者代理人の設置を特におすすめするのは、以下のようなケースです。

  • 受益者が高齢で認知症の不安がある場合
    将来的に本人の判断能力が低下しても、代理人がいれば信託の透明性が保たれ、契約の変更も柔軟に行えます。
  • 「受託者」以外にも兄弟姉妹がいる場合
    長男が受託者(管理役)を務める場合、次男や長女が「受益者代理人」になることで、親族間のチェック機能が働き、後のトラブルを防ぐことができます。
  • 障害を持つ子の生活を守る場合
    「親亡き後信託」などで、判断能力に不安があるお子様を受益者にする場合、信頼できる第三者を代理人に立てることで、長期間にわたる確実な給付を保証できます。

誰を「受益者代理人」に選ぶべきか?

受益者代理人は、誰でもなれるわけではありません。まず、「受託者との兼任はできない」という大原則があります。自分で自分を監視することはできないからです。

主な候補としては、以下の2つのパターンが考えられます。

パターンA:親族(他の子供など)

メリットは、「費用がかからない」ことと、家族の事情をよく理解していることです。ただし、法律的な知識が不足していると、受託者との間で感情的な対立が起きてしまうリスクもあります。

パターンB:専門家(行政書士、司法書士、弁護士)

メリットは、「中立・公平な立場でチェックできる」ことと、複雑な法律手続きを代行してくれることです。報酬(ランニングコスト)は発生しますが、親族間の紛争を未然に防ぎたい、より強固な安心感が欲しいという場合には最適です。

受益者本人が「できなくなる」こと

受益者代理人が就任している間、本人は以下の権利を直接行使できなくなります。

  • 受託者の監督・チェック
    「通帳を見せて」「収支報告をして」といった管理状況の確認。
  • 信託内容の変更・終了
    「契約内容を少し変えたい」「もう信託をやめたい」という同意や決定。
  • 受託者の解任や選任
    「受託者が信用できないから辞めさせる」「次の受託者を決める」という行為。
  • 受託者への責任追及
    受託者がミスをして損害が出たときに、損害賠償を請求すること。
  • 給付の請求
    「今月分のお金を払って」という受託者への正式な請求。

つまり… 受益者代理人がいる間、受益者の「意思決定」や「監督」に関わる窓口は、すべて受益者代理人に一本化されます。

受益者本人が「引き続きできる」こと

すべての権利を奪われるわけではありません。以下の権利は残ります。

  • 「利益」を受け取ること
    お金や不動産の収益を受け取る権利そのものは失われません。代理人が代わりに受け取って自分のものにするわけではなく、あくまで「受益者のため」に管理を指示するだけです。
  • 信託契約で「本人ができる」と定めたこと
    契約書の中に「〇〇の権利だけは、受益者代理人がいても本人が行使できる」と特約を書いておけば、本人が行うことができます。
  • 一部の特殊な権利(催告権など
    法律上、最低限認められている一部の通知的な権利などは残ります。

設計時の注意点

受益者代理人を置く際に、注意していただきたいポイントが2つあります。

  1. 報酬の有無と金額
    専門家に依頼する場合はもちろん、親族にお願いする場合も、将来の負担を考えて「月額いくら」あるいは「無償」とするかを契約書に明記しておくべきです。
  2. 就任するタイミング
    「契約開始と同時に就任する」パターンと、「受益者の判断能力が低下した時に就任する」パターンの2通りがあります。ご本人の現在の状況に合わせて最適なタイミングを選びましょう。

まとめ

家族信託は「作って終わり」ではありません。その後、何十年と続く管理の仕組みです。その長い期間、誰が受益者の権利を守り、受託者と対等に話をしていくのか。その答えが「受益者代理人」にあります。

「うちの家族に代理人は必要なのかな?」「具体的にどんな費用がかかるの?」と気になった方は、ぜひ一度、信託設計のプロに相談してみてください。

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