こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。
「身寄りがなくお一人で暮らしていた方が亡くなった」「疎遠な親族の相続が発生したが、他に誰も相続人が見当たらない」—。このような状況で問題となるのが、相続人不在です。
相続人が一人もいない場合、故人の財産は宙に浮いた状態となり、勝手に処分することはできません。最終的に遺産は国庫に帰属することになりますが、その前に家庭裁判所を中心とした煩雑な手続きが必要となります。
今回は、この相続人不在となった場合の遺産の行方と、その手続きの流れと生前対策について解説します。
相続人不在とは? 遺産の最終的な行方
相続人不在とは、故人に法定相続人が一人も存在しない状態を指します。
法定相続人とは、民法で定められた遺産を相続する権利を持つ人のことです。配偶者は常に相続人となり、それ以外の親族は以下の順位で相続人となります。
- 第一順位: 子、孫などの直系卑属
- 第二順位: 親、祖父母などの直系尊属
- 第三順位: 兄弟姉妹、甥姪
これらの法定相続人が全員いない場合や、全員が相続放棄をした結果、誰も相続する人がいなくなった場合に「相続人不在」が確定します。
この相続人不在が確定すると、遺産は最終的に国庫(国)に帰属しますが、その前に「特別縁故者」への財産分与の機会が設けられます。
相続人不在が確定するまでの複雑な手続きの流れ
相続人不在が確定し、遺産が国庫に帰属するまでには、約1年~1年半程度の時間を要する複雑な手続きを経る必要があります。この手続きの中心的な役割を果たすのが、家庭裁判所に選任される相続財産清算人です。
主な手続きの流れは以下の通りです。
①相続財産清算人の選任申立て
利害関係人(債権者、特別縁故者になる可能性がある人など)または検察官が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、相続財産清算人の選任を申し立てます。
②相続財産清算人の選任と相続人捜索の公告(1回目)
申立てが認められると、家庭裁判所によって相続財産清算人が選任されます。通常は弁護士や司法書士といった専門家が選任されます。
選任後、裁判所は「相続財産清算人が選任されたこと」と「相続人は申し出るように」という内容を官報に2か月間公告します(1回目の相続人捜索)。
③債権者・受遺者に対する請求申出の公告
1回目の公告期間が満了しても相続人が現れなかった場合、清算人は、被相続人の債権者や受遺者(遺言で財産を受け取ることになった人)に対し、2か月以上の期間を定めて請求申出の公告を行います。
④相続人捜索の公告(2回目)と不在の確定
債権者への弁済などが終わった後、家庭裁判所は、さらに6か月以上の期間を定めて、改めて相続人の捜索の公告を行います。これは、相続人不在を確定させるための最も重要な手続きです。
この6か月以上の期間が満了しても相続人が現れなかった場合に、相続人不存在が確定します。
⑤特別縁故者への財産分与
相続人不存在が確定した後、3か月以内に、被相続人と特別の縁故があった人(特別縁故者)は、家庭裁判所に財産分与の申立てをすることができます。
特別縁故者と認められる例としては、以下のようなケースがあります。
- 長期間にわたり被相続人と生計を同じくしていた事実婚のパートナーや内縁の配偶者。
- 被相続人の療養看護に努めた親族や友人。
- その他、被相続人と特に密接な関係があった人。
家庭裁判所が個別の事情を総合的に考慮し、分与の可否や分与額を決定します。この申立て期間が過ぎるか、申立てが却下された場合、残った遺産は最終的に国庫に帰属して全ての手続きが完了します。
当事務所がお手伝いできる生前対策
相続人不在となると、親族や関係者に多大な時間的・金銭的な負担をかけることになります。また、故人の財産を「お世話になった人に渡したい」「特定の団体に寄付したい」という故人の意思も反映されにくくなってしまいます。
そこで重要になるのが、生前対策です。当事務所は、以下の対策を通じて、お客様の意思が尊重される相続の形をサポートします。
遺言書の作成
法定相続人がいないことが分かっている場合、最も有効な対策は遺言書を作成することです。
遺言書を作成すれば、「遺贈」という形で、お世話になった友人、親族以外の内縁の妻、特定の団体などに財産を確実に引き継ぐことができます。これにより、特別縁故者の申立てを待たずして故人の意思を実現でき、手続きもスムーズになります。
遺言執行者の指定
遺言書と併せて遺言執行者を指定しておくと、より確実です。遺言執行者は、遺言の内容を実現するための手続き(財産目録の作成、不動産の登記、預貯金の解約など)を行う権限を持ちます。
遺言書の作成支援はもちろん、遺言執行者としての役割を担い、相続手続きの円滑な進行を支援します。
死後事務委任契約の活用
遺産の手続きとは直接関係ありませんが、亡くなった後の葬儀や病院・施設の精算、住居の整理などの事務手続きを信頼できる人に任せる「死後事務委任契約」も有効な対策です。特に相続人不在の可能性が高い方にとっては、残された関係者に迷惑をかけないための重要な準備となります。
まとめ
相続人不在の手続きは、時間も費用もかかる複雑なものです。ご自身の財産の行方についてご不安な方は、ぜひ当事務所にご相談ください。未来の不安を解消するためのサポートをさせていただきます。
初回相談は無料です。お気軽にご連絡ください。
詳しくは行政書士わたなべ事務所まで


