円満な相続のために!遺産分割協議書の書き方を行政書士が解説

相続

こんにちは 行政書士わたなべ事務所の渡辺晋太郎です。

相続手続きにおいて、最も重要かつトラブルを避けるために不可欠な書類が遺産分割協議書です。この書類がないと、預貯金の引き出しや不動産の名義変更など、ほとんどの相続手続きを進めることができません。しかし、その書き方にはいくつかのルールがあり、不備があると無効になったり、将来のトラブルの原因になったりする可能性があります。

今回は、その重要性から具体的な書き方、注意点までを解説します。


遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは、亡くなった方(被相続人)の遺産を、誰が、何を、どれだけ相続するかを、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)合意した内容を書面にしたものです。相続人全員が署名・押印することで、その合意内容が法的に有効となります。

遺産分割協議書はなぜ必要?

  • 相続手続きの必須書類
    銀行での預貯金解約・名義変更、法務局での不動産の相続登記、証券会社での株式の名義変更など、ほとんどの相続手続きにおいて、遺産分割協議書は提出が求められます。
  • 相続トラブルの防止
    口頭での合意は「言った、言わない」のトラブルになりがちです。書面にしておくことで、後々の争いを防ぎ、円満な相続を実現できます。

遺言書がある場合は原則として遺産分割協議は不要ですが、遺言書に記載のない財産があったり、相続人全員の合意で遺言書と異なる分割をする場合は、遺産分割協議書が必要になります。


遺産分割協議書を作成する前の準備

遺産分割協議書を作成するためには、事前の準備が非常に重要です。

相続人の確定

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を全て取得し、相続人を確定します。思わぬ隠し子や、離婚した配偶者との間にできた子供などが判明することもあり、これが後々のトラブルの元になることもあります。

相続財産の確定と評価

  • プラスの財産
    不動産(土地・建物)、預貯金、株式、有価証券、自動車、美術品、骨董品、ゴルフ会員権などです。
  • マイナスの財産
    借金、ローン、未払金、買掛金などです。

これらを漏れなく調査し、リストアップします。特に不動産は、評価方法によって金額が大きく異なるため、相続人全員で合意できる評価額を定めることが重要です。

遺産分割協議

確定した相続財産と相続人に基づき、誰がどの財産を相続するのか、相続人全員で話し合います。この話し合いこそが、遺産分割協議の肝となります。感情的にならず、冷静に、公平性を意識して話し合うことが大切です。

遺産分割協議書のサンプル

基本的な遺産分割のケースでの遺言書例です。

                      遺産分割協議書

被相続人 山田 太郎 
本籍   〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地 
住所   〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地 
死亡年月日 〇年〇月〇日

上記被相続人 山田太郎の相続につき、共同相続人全員による遺産分割協議の結果、以下のとおり合意した。

第1条(預貯金)

以下の預貯金は、相続人 山田 花子 が取得する。

〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号:1234567
 (令和〇年〇月〇日現在残高:金 3,000,000円)

〇〇信用金庫 〇〇支店 定期預金 口座番号:8901234
 (令和〇年〇月〇日現在残高:金 2,000,000円)

第2条(不動産)

以下の不動産は、相続人 山田 一郎 が取得する。

【土地】
所在   〇〇県〇〇市〇〇町 
地番   〇番地 
地目   宅地 
地積   〇〇.〇〇平方メートル

【建物】
所在   〇〇県〇〇市〇〇町〇番地 
家屋番号 〇番 
種類   居宅 
構造   木造瓦葺2階建 
床面積  1階 〇〇.〇〇平方メートル   2階 〇〇.〇〇平方メートル

第3条(有価証券)

以下の有価証券は、相続人 山田 花子 が取得する。

〇〇証券株式会社 〇〇支店 口座番号:ABCDE (保有銘柄:株式会社〇〇 株式〇〇株)

第4条(自動車)

以下の自動車は、相続人 山田 次郎 が取得する。

車種名  〇〇(例:トヨタ プリウス) 
登録番号 〇〇〇 〇〇 あ 〇〇〇〇 
車台番号 ABCDE123456789


第5条(その他の財産)

本協議書に記載のない被相続人名義のその他の財産(現金、家財道具、骨董品など一切の動産を含む)は、相続人 山田 花子 が取得する。

第6条(後日判明した遺産)

本協議書に記載のない遺産が後日判明した場合は、改めて相続人全員で協議し、その分割方法を決定する。

第7条(本協議書の作成通数)

本協議書は、正本4通を作成し、相続人各自が各1通を保管するとともに、相続手続きに必要な関係機関へ提出する。

上記のとおり、共同相続人全員による遺産分割協議が滞りなく成立したので、これを証するため、本協議書を作成し、各自署名押印する。

〇年〇月〇日

共同相続人

住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地 氏名:山田 花子 実印

住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地 氏名:山田 一郎 実印

住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地 氏名:山田 次郎 実印

サンプルから学ぶ作成のポイント

上記の記載例を踏まえ、遺産分割協議書を作成する上での重要なポイントを再確認しましょう。

具体的に、正確に記載する

  • 預貯金
    銀行名、支店名、預金種別、口座番号は必須です。残高を記載する場合は、協議時点の正確な金額を記載しましょう。
  • 不動産
    登記簿謄本に記載されている通り、所在、地番、地目、地積、家屋番号、種類、構造、床面積などを漏れなく記載します。一字一句正確に写すことが重要です。
  • その他財産
    自動車であれば登録番号や車台番号、株式であれば銘柄名や証券会社の口座番号など、その財産を特定できる情報を必ず記載します。
    「その他一切の財産」という包括的な表現を使う場合は、具体的な財産を挙げた後、その残りを一括して取得する相続人を明記します。

誰が何を相続するかを明確に

各条項で、「誰が」その財産を「取得する」のかを明確に記述します。

代償分割や債務の承継も忘れずに

代償分割とは、相続人のうちの一人または数人が、分割しにくい特定の財産(不動産や事業用資産など)を単独で取得する代わりに、他の相続人に対して「代償金」を支払うことで、公平な遺産分割を実現する方法です。

  • 代償分割がある場合は、支払う人、受け取る人、金額、支払期限を具体的に記載します。
  • 債務を特定の相続人が承継する場合は、その旨を明確に記載します。ただし、これは相続人間の合意であり、債権者(金融機関など)への同意は別途必要となる点に注意が必要です。債権者が同意しない限り、法定相続分に応じて相続人全員が債務を負うことになります。

署名と押印

  • 相続人全員が自筆で署名し、実印を押印します。印鑑登録証明書と照合されますので、鮮明に押すようにしましょう。
  • 作成日付も忘れずに記載します。

製本と契印

複数枚にわたる場合は、ホチキスで綴じた後、すべてのページの境目に相続人全員が契印(見開きページをまたぐように押印)します。これは、ページが差し替えられたり、追加されたりするのを防ぐためです。

予備的な条項

「後日判明した遺産」に関する条項は、万が一の事態に備えるために有効です。ただし、この条項はあくまで便宜的なものであり、基本的にはすべての財産を漏れなく調査して分割協議を行うべきです。

まとめ

上記サンプルはあくまで一般的なものです。ご家族の状況や相続財産の内容は千差万別であり、一つとして同じものはありません。

遺産分割協議書の作成は、相続を円満に終えるための第一歩ですが、「この書き方で本当に大丈夫かな?」 「うちの場合は、他にどんなことを書けばいいんだろう?」などのような不安を感じたら、ぜひご相談ください。
相続人調査や財産調査、法的に有効で、後々のトラブルを防ぐ遺産分割協議書を作成することで、ご家族が安心して故人の遺志を継ぎ、新たな生活をスタートできるよう、お手伝いさせていただきます。
どうぞお気軽にご相談ください。

初回の相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
詳しくは行政書士わたなべ事務所まで

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